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父殺し、母殺しの物語

白一色だった世界が、田んぼの黒い土、トタン屋根の錆びた鉄の色と混ざり合い、まだら模様の様相を呈してきた。
もう純白じゃない。白さはいろんな色にとって変わっていく。
それでも、日没後の、いつもとは違う蒼白い風景がいいなあ、と思う。
ベランダにいびつな雪ん子を3体つくった。


○○○○○


今日の読書は『おはなしの知恵』(河合隼雄著作集 「物語と現実」)。
どの話も知っている話だった。その中で唯一知らなかったアイヌの物語が最後のほうに紹介されていた。
育ての父親を殺す娘の話である。
これは印象に残った。だいたい親殺しは「父-息子」の間で成り立つ話が多いからだ。

でも、この間見た「キルラキル」では、娘である皐月が母親殺しをしていたな。(精神的には父-息子の話と同系)
物語を作る際、親子関係というのは重要なベースになる。なぜなら、親子関係とは自分と世界の関係と同じになるからだ。

その中で、娘が父を殺す話。
ちなみに、父-娘の物語では、「つぐみの髭の王さま」や「リア王」を思いつく。
「リア王」に至っては、娘のコーディリアはほどんど夫であるフランス王を顧みなかった。あんなに出来た夫だったのに……。

さて、物語は、アイヌの娘が父親の告白で彼が人食いの神だと知る。父親は人食いの性をもちつつ、娘を食べるのは我慢してきたが、狩小屋にいる村長の息子たちを食べるつもりだ、と娘に告げる。
娘は驚くが、素知らぬ振りをする。ひそかに村長の息子たちに逃げるようにと伝え、自分は小屋に父親を閉じ込め、火を放つ。

アイヌの世界観によって、人食いの神である父親はあの世で救われるが、実際、父殺しの罪を1人の娘が抱えていくのは、たいへんなことである。
この話の場合、村長の息子たちが娘の力になってくれて、父親もあの世でより良き神として生まれ変わり、最終的にはハッピーエンドなのだが、この世界観がないと、どう収拾つけてよいかわからないくらい難しい話だ。

父-息子の軸: 神話の時代からある。父が息子を殺したり、息子が父を殺したり、この場合、どちらもが生き残る、というのはほとんどない。少年成長物語によくある、一般的な物語の基本ベースである。
母-息子の軸: まあどろどろとした母殺しの物語(およびドラマ)がいっぱいある。この場合、母を死なせて、息子は自立しました、という健全な話にはあまりならない。物理的な母殺しをすると、確実に病んでしまう。
母-娘の軸: 神話の時代から一心同体である。これを破るには他者(だいたい男性)の介入が起こる。
そう言えば、「銀河鉄道999」ではメーテルは物語の最後に母である女王を殺すが、結局メーテルも母の系譜を受け継いだような……。とにかく母性のしぶとさは折り紙つき。

父-娘の軸
この軸も最初は一体感から始まる。「テンペスト」では父と娘だけが住む島にいろんな訪問者が現れることによって物語が進む。
あまり破壊的な関係にならないのは、娘がだいたい他の男にかっさらわれるから。
大国主命と須世理姫だって、どちらかというと昔話でよくある、娘婿と父親の対決である。
では、父-娘の対立はあるのか、という疑問がわく。

アイヌの物語では、「育ての親である父親を殺してしまった」と娘が嘆くが、村長の息子たちが逆に「あなたはお父さんを救ったのだ」と説得する。
ただのなぐさめではない。息子たちは神送りの儀式を通して、父親の魂を救うのである。
しかも、父親が夢の中に出てきて礼を言う、という完璧な落とし所で終わる。

これは「父殺しの話」であっても、「人食いの性をもつ父を救う話」でもあるから、一般的な父殺しの話とは一線を画している。
だって、殺しによる「罪悪感」が「儀式」によって昇華しているから。

「父殺し」「母殺し」の話は、「自立」の物語であり、「罪悪感」にどう折り合いをつけていくかの物語であり、自分は「世界」をどう認識し、創造するかの物語なのだ。

だから、アイヌ的世界観の「神送り」はすごい知恵だと思うが、物語単独で読むと物足りない。


「エデン」を追放された人間が「罪」を負ったのも、当たり前だ。
「自立」と「罪」はセットであり、そうでないと、また「世界」も生まれないから。


「父殺し」をした娘は、アイヌの物語の場合、すぐに救われたが、わたしの中の、「父殺し」「母殺し」をする娘がどう救われるかは、まだ決まっていない。





☆今日のHAPPY♡THANKS☆

今日は洗濯して、ご飯作って、まったりと過ごせたいい日だった。
雪見をゆっくり出来たし。
天気のいい雪の日の休日っていいね!
by mao-chii | 2014-02-09 23:59 | 本と物語の話 | Comments(0)

年々、いろいろ、雑記帳


by まおちぃ 改め あみぼう
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