<転載> 2007 アイスランド記 ⑤ツアーの筆頭 ゴールデンサークルツアー
2017年 05月 23日
一気にテンションダダ下がっています。
テンションの下がり具合に反比例して、写真が多くなっています。
もう写真でごまかすしかない。
いわゆる、そういう意志の表れです
もっともっともっと写真を撮っておけばよかった、と今は思っています。
日本にいると、アイスランドの風景はやっぱり特別です。
でも、アイスランドにいると、あっという間に慣れてしまう風景なのです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 以下、転載
日本に来ると、東京、京都と、まず訪れる観光都市が決まっているように、
アイスランドに来ると、まず押さえておくツアーがある。
それが、このゴールデンサークルツアーだ。
比較的安価、かつ、アイスランドの最大公約数的ツアーなので、1年中、休むことなくバスが出ている。安価と言っても、1万4000円ぐらいはしました。
何が「ゴールデン」なのかが不思議だったけど、
グヴェラゲルジ
↓
ケリズ火口湖
↓
グトルフォス
↓
ゲイシール
↓
シングヴェトリル
というサークル状の道順にあるスポットがまさにゴールデン。
ラストスポットは世界遺産。
レイキャビクから近距離、1日で周遊できるお手軽さに加え、アイスランドらしい景観が堪能できる。
で、私の乗ったバスも満員だった。
※
アイスランドはツアーが充実している。
観光業はツアーで食っているのではないかと思うほど、完璧なサービスをしている。
まず第一に、ツアーバスがホテルまで送迎してくれる。
この点、アイスランドでの宿泊はホテルを使ったほうが断然便利ということになる(1泊3万だけど)。それに、ゲストハウスはなー、もう二度と使わま、って思ったし。
その大手ツアー会社の名前を「Reykjavik Excursions」という。
「あの〜、今日、このツアーに参加するんですけど、あのバスに乗ればいいんですか」
「私は知らないの。バスの人に聞いてみて」
ホテルのフロントに問い合わせるが、要領を得ない。出発時刻が刻々と近づいてくる中、ホテルの前に留まっているバスの運転手さんに聞いても、違うと言われる。
(だ、大丈夫かな? バス、来るのかな?)
出発予定時間を大幅に過ぎた頃、私と同じ目的であろう旅行者がぽつぽつと集まってくる。ゴールデンサークルツアーに行くのか? と尋ねると、別のツアーに参加とのこと。「そのツアーなら、あそこの人達じゃあない?」
見ると、3人ほど、離れた場所に立っている。
見ると、3人ほど、離れた場所に立っている。
(お仲間だ〜)
オイオイ、マジバス来るんかな?バスに乗れなかったら、今日1日どうしよう、つーか、来てくれ、外国で予定外のことが起こるのは勘弁だからね、
でも、もし来なかったら、・・・金は戻ってくるのだろーか? 1万4000円が
などと、延々気をもんでいた不安MAXの心がようやく落ち着いた。
やってきたバスにみんな乗って、BSI(バスターミナル)に向かう。そこで、ツアーごとにバスを乗り換える。
私の乗ったバスは、そのままゴールデンサークルバスになった。
で、ツアー感想は、なんか寂しかった。
※
外国に行くたびさ、思うんだよね。次は誰かと来よう。もう1人はやめよう。1人旅好きだけどさ、この寂寥感をどーすればいいのさ。
陽気なバスガイドのおじさんが英語で各地を説明する。
バスはレイキャビクを離れると、山も緑もない、焦げついた黒色の地表が現れる。バスは道なりに進むが、行けども行けども、風景は変わらない。
レイキャビクにはアイスランドの人口の60%が住んでいる。4番目に多い都市(というより町)が北のアークレイリ。その他、主な人口密集地は数えるほどしか無い。
だから、ここは都市というより、町。町というより、見た目集落。
グヴェラゲルジ
地熱での温室野菜栽培が有名らしい。
おじさんがいろいろ言っていたが、バスを降りた私はなんか「道の駅」なるものに着いたと思っただけだった。ビニールハウスなんて、あったっけ?
アイスランドでは、野菜は全部輸入している。気候と土壌が全く適さないので仕方がないが、だからこそグヴェラゲルジが特別な場所になるのだろう。
でも、やっぱりビニールハウスなんて、あったっけ?
この土地の象徴を見逃して、「道の駅」で亜熱帯の植物園を見た。これも同じ事情で、非常に価値あるものなのだが、私の関心は土産物と、アイスを買うか、買わざるかということにしかなかった。
(昨日も食べたしなあ。やっぱ、高いなあ)
うろちょろうろちょろした挙句、そのままバスに帰った。
だから、ビニールハウスが。
ケリズ火口湖&グトルフォス
地質学的興味がある人なら、きっとこれから先のスポットはよだれものだ。ただ、そのときの私は、景観<ロンリネス オブ マインだったから、あんまり覚えていない。それよか、バスの出発時刻は!集合場所は!!に聴力が集中。
そして、昼ご飯に関心が―――
サンドイッチとエスプレッソ。
(エスプレッソじゃなく、普通のコーヒーにすればよかった)
(サンドイッチじゃなく、スープにすればよかった)
(・・・サビシイ)
観光地に必須の土産物兼カフェの店。あの900円するサンドイッチを食べて、意気消沈する。
サンドイッチは作り置きで、冷蔵のウィンドウに並べてあるから、パンは冷えて固いし、ハムも野菜も萎縮して、もさもさしている。エスプレッソはデミタスコーヒー並みに小さなカップで、飲料として全然足りない。
(お金、ケチるんじゃなかった)
コーヒーの方が50クローネ高かったし、スープは100クローネほど高かった。
これが、ロンリー度に拍車をかけた。
――でもね、1人でも寂しくないときもあるんだよ。
例えば、感動するくらい美味しいものを食べたときとか(食べ物―ゆったとおり)、
知的好奇心が上回ったときとか(知的好奇心―英語を解せ)。
・・・ただの水溜りと滝じゃん。(ロンリー度―SUPER)
かつて大学生だった私が、先生に言ったことがある。
「私、大自然は好きだけれど、それだけではあまり興味ないんですよー。やっぱり、人間の歴史がないと」
これって、結構的をついてるよな。
大自然だけじゃ、癒されない。
地球の生命なんて、デカすぎて、想像が追いつかないし、
英語ばっかで、わかんないし、
みんな、外国人だし、
チョコレート、スンゲー高いし。
表題に戻ろ。
ケリズ火口湖は、文字どおり噴火のあとに出来た湖である。よく写真となっているのは、丸い椀の形にへこんだクレーターの底で丸い水鏡がきらきらと光っている姿だ。
バスは特に上り道を行ったわけではないのに、眼下に火口があるという不思議。ここ一帯は数千年来の火山群が連なっている。ケリズ火口湖も約3000年前の噴火でできたカルデラ湖だ。日本も火山国なので、日本人の私にとってはそこまでめずらしくはない。
緑青色の湖面に赤銅色の壁面。その色彩の神秘的なコントラストが名所に一役買っている。乾燥した窪地の奥で密やかに映る水の王国――シチュエーション的に写真映えがするけど、あいにくと色彩がねえ。私の写真には緑青も赤銅もないわけよ。うっすらと苔むしている。
ちなみに湖の近くまで降りることができます。降りなかったが。
グトルフォスはケリズ火口湖の近くにあった。ゴーザフォス同様の巨大な滝である。※先に見たのはグトルフォスです。念のため。
ここにはある逸話がある。バスのおじさんはきっちり話したと思うが、全然聞いていなかった上、・・・像はどこにあるんだ?
灰緑の水がが地表をなめるように覆いつくし、襞となり、紋となり、漂っている。かと思えば、突如、谷底へと崩落する。
沸き立つ幾本もの白い柱は、裾を広げた衣にみえた。
空模様以外は不変の、寂寞とした土地に、この柔らかな水布が細く、長く、遠くから敷かれている。美しいなあと改めて思う。(写真にて)
この風景を守るために身を投げようとした女の子がいた。20世紀初頭の話だ。
その女の子、シグリットの銅像は見逃した。
ゲイシール
日本人家族に会った。デュッセルドルフから来ていた。
(いーな。ドイツだと、アイスランドに来るのもだいぶ楽だよな。費用的に)
写真を撮り終わった夫婦に近づくと、2人がほほ笑んだ。
「日本から来たんですか」(夫)
「はい。遠かったです。ヨーロッパからだと近いですね」
「デュッセルドルフには日本人が結構いるのよ」(妻)
「そうなんですか。ドイツではもう長いんですか」
「えーと、(忘れた)年になるかなあ。下の子はドイツで生まれたのよ」(妻)
2人の姉妹が地下水が勃発するエリアを走り回っている。
「バイリンガルですね〜。いつアイスランドに来たんですか?」
「昨日。そのままブルーラグーンに寄ってきたの」(妻)
「ブルーラグーンならチケット買いましたよ。高いですよね」
「入浴代が1200クローネだったかな」(夫)
「外が寒いから、長く入ってたの」(妻)
「最終日に行く予定なんです。アイスランドって物価が高いですよね」
「そうよね〜。家族でサンドイッチとコーヒー買っただけで、3000クローネ要ったものね」(妻)
「ドイツでの暮らしはどうなんですか」
「市場でよく食材を買っているのよ」(妻)
「ほう」
ドイツが未知の国である私はもっと話を聞きたかったが、そこは空気を読んで、退散。
穏やかで、優しいご夫婦だった。
アイスランドでは日本人比率が著しく低いので、出会えただけでもラッキーだ。
うん、ラッキー・・・。
家族って、いいよね。ちくしょー。
え? ああ、ゲイシールは、休泉中でした。
若い泉が吹き上げてはいたけど、あれは10mにも満たないんじゃないかな。いつ吹き上げるかがわからないので、デジカメを構える手が疲れた。でも、写真は何枚か撮ったよ。
シングヴェトリル
アイスランド屈指の世界遺産。
世界で初めて「アルシング」という民主議会が行われたところであり、地球の地殻プレート移動によって生まれた「ギャヴ」という大地の裂け目が走っているところ。
私は山室静+これを見るためにここに来た。
夜の11時半から放映している『世界遺産』のアイスランド編を見て、強く、強く、行かなきゃって思ったのだ。
画面中。
薄霧に覆われた静寂な世界に、徐々に切り立った断崖と緑濃き平原が現れる。原野に広がる湖は空を映して透き通り、地形を縦断する岩場は濡れそぼった青草や苔でしっとりと憂いを帯び、本来の頑強さをひそめている。その一角で、青地に真っ赤な十字が翻るアイスランド国旗――
うわあ、イメージにぴったり!!!(←何の?)
地中海の目のくらむような陽光。
中南米の目の覚めるような色どり。
それらとは全く無縁の、靄に煙る幻想的な光景は、私の持っていたアイスランドのイメージをあっさりと覆した。氷山に鮮血の火柱が立つ、白と赤(と青と黒)の国は、緑を加えることによって完璧になった。
ツアーの最後はこの緑野だった。
駐車場は標高の高い、見晴らしの良い場所にあった。
バスを降りると、上空は澄み渡り、風が舞っている。
ビジターセンターは小さく、観光客の多くは外にあるトイレで列をつくっていた。
(・・・トイレには後で行こう)
その駐車場から下る道筋がギャヴの谷間になった。
毎年、数センチづつ動いていると言われるプレートとプレートの境は、ごつごつとした巨岩群が二手に裂かれて、そそり立っている。
岩石の壁がとぎれ、眺望が開けると、議会平原、シングヴェトリルが姿を現す。
シングヴェトリルが――
(・・・?)
(アレ?)
青い空。輝く湖面。湖畔に建つ教会。
テレビで見たた風景と変わらない。・・・ただ、一つを除いては。
・・・季節、間違えたな。
記憶の中で青々としていた平原は、砂埃がたちそうなほど乾燥した土がむき出しに広がっており、大きく色を塗り替えていた。
(野焼きをした後みたいだなあ)
ギャヴの頂上に登ると、はるか水平線に氷山が凹凸を刻むぐらいで、視界を遮るものは何もない。その広大な土地を侵食するように湖が多岐に分かれ、あるいは湖に堆積する土砂が水の筋を変容させ、その両者の融合が平原に様々な形象を生み出している。
(美しいっちゃ、美しいけど・・・)
このシングヴェトリルで、アイスランド人は国のあらゆる議題を討論しあった。声が特別に反響するスポットがあり、観光案内版で示してあった。
この場所で発声すると、ギャヴの断層ではね返り、声が平地まで届くとのことだが、本当なのだろうか。
この断層地帯に衆人が集まり、寝泊りをし、数ヶ月生活をしたということだが、メインの原っぱにはどんな情景が広がっていたんだろうか。
この平原でアイスランド人達が数十年前にもアルシングを開いたということだが、ここはこの国の人達にとって、聖地なんだろうな。
そういうことを思い巡らせてもよかったんだな。今、思えば。
緑がない・・・。うわ、使えねえ。
(↑だから何が?)
機会があれば、もう一度、再訪したい・・・よーな。
※
「フォスホテルリンド!」
バスがホテルまで送ってくれる楽チン帰路の旅。
ガイドのおじさんが声を張り上げて宿泊ホテル名を言ってくれるが、肝心の私は通路でつっ立ったまま、きょろきょろしていた。
(はあ?ホテル、どこにあるの?)
見覚えのない交差点にバスは停車している。
(こんなところで降ろされても、わかんないよ)
「あの〜、ホテルってどこにあるんですか」
オロオロする私に、「カモン」
おじさんはにっこり笑い、バスを降り、私の肩を抱いた。
「この交差点を渡って、あの通りがあるよね。あれを左にまっすぐ行けば、ホテルだよ」
「ありがとう!」
おじさんと会話をしたのは、その日、それだけだった。
2日後、ブルーラグーンに向かうバスに乗り込んだ私は、運転手さんに妙に人懐っこい笑顔を向けられた。
「おや、また会ったね!!」
言われたことを解するのに数秒。そして、ツアーバスのおじさんだと判明するまで数秒。
挨拶をするタイミングを逃してしまった。
でも、とてもうれしかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 転載、終わり
けちょんけちょんに貶されているシングヴェトリルだけど、
これはこれでいい感じじゃないか。
天気の良さがかなりカバーしています。
緑ふさふさの風景に出合いたかったら、あと2ヵ月は遅く(7月末くらいに)行かなきゃね。
by mao-chii
| 2017-05-23 23:21
| 旅の話
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