みなさま、お久しぶりでございます。

無事、試験も終わりまして、ドラクエ11も、あっという間にレベル99になりました^^ 全ストーリーをクリアしまして、まあ、あとはメタルヨッチを自力で見つけたいなー、なんて。

あー、馬がね、馬レースがね、わたし、超がつくほど不器用で、何度やってもプラチナ杯がクリアできなくて、泣く泣く弟のところにもって行きました。あやつなら、ドラクエ11をやってるはず! と思ったらビンゴで、しかもいつの間にかPS4を買っていて、「ごめん、DSだけど、できるかな」と渡したら、これまたあっという間にやつはクリアしまして、これのどこが難しいの?、という目で返されました。なので、「“ブラック杯”もやって! ついでに“むずかしい”バージョンも!」と丸投げしました。いや~、これで何憂うことなく、ストーリーが進められましたわ。(試験期間中に)
とにもかくにも、いい物語でございました110.png
ドラクエ1からやってると、懐かしいな~、と思えることがいっぱいでした。



というわけで、長らくほったらかしにしていたこちらにようやく戻ってきました。

この間(かん)、京都には2度行ってるので、京都記事でもあげようか、と思いましたが、またぞろ写真(別名:手抜き)記事もなんだかな~、とも思ったので、いつもの如く“昔話”にします。
昔話なんて超絶マイナーですが、
ぶっちゃけ誰にも求められてはいませんが、わたしはいっとう昔話が好きです。
ではでは、どうかおつき合いください169.png



                  ○○○


ある村にハリシャルマンというバラモンが住んでいました。貧乏なうえにばかで、生きてゆく手立ても知らなかったため、たいそうみじめな暮らしをしていました。おまけに、前世で悪いことをしたため、その罰として子供がうようよいました。そこで、家族ともども、こじきをするよりほかなかったのです。
(山室静著『世界むかし話集』より)


小さいときは何とも思わなかったが、ヘタに知識がつくと、バラモンなのに貧乏なのか? とか、バラモンなのにばかなのか? とつい戸惑ってしまうが、別にバラモンだからといって金持ちなわけじゃないし、生まれつき頭が良いわけでもないのだろう。
子沢山の貧乏バラモンが、生活に困って、ついに町に出てくるところからお話は始まる。



ハリシャルマンは町に出てきて、スチュラダッタという金持ちの下男になった。妻は下女に、息子達は牧童になった。そうして、家族は主人の家のそばに住むことになった。
ある日、主人の娘の結婚式が開かれた。屋敷が祝いの客人でいっぱいになり、様々な料理がふるまわれた。ハリシャルマン家族は、この機にご馳走にありつける、と大いに期待をするが、夜になっても彼らのことを顧みるものは誰ひとりいなかった。
あまりに悲しくて、ハリシャルマンは妻に愚痴をこぼす。

「みんながこんなにおれを無視するのも、ただおれが貧乏でばかだからだ。おれはペテンにかけてでも、さも利口な人間のようにふるまわなくてはならん。そうしたらスチュラダッタ旦那も、きっと重んじてくれるはずだ。だから、おりを見て旦那に、おれがすばらしい知恵をもっていると話しておくれ」

そう言うと、ハリシャルマンは行動を起こした。みんなが寝静まったころ、花婿の馬を盗み、自分だけが知る場所に隠したのだ。
明くる朝、馬が盗まれたことを花婿が知り、ちょっとした騒ぎになった。主人であるスチュラダッタは血眼になって馬を探すが、いっこうに見つからない。すると、ハリシャルマンの妻が、つつ、とスチュラダッタに近づき、
「なぜうちの亭主にお聞きにならないのですか? あの人はとても知恵があるだけでなく、いろんな学問にも精通していますのよ」
と、さも自然な素振りで話しかけた。
主人はすぐさまハリシャルマンを呼んだ。

ハリシャルマンはやってくるなり、
昨日はあなたは私のことを忘れていましたね。馬を盗まれて、私のことを思い出したんでしょう?」
と、チクリと刺した。
主人はあわてて非礼をわびたあと、馬を盗んだのは誰なのかを教えてくれ、と懇願した。ハリシャルマンはもったいぶった態度で、幾本もの線を地面に引いた。そして、さらにもったいぶった口調でこう述べた。
「ここより真南の方角に、泥棒がその馬を隠しています。急ぎなさい。夕方になると、泥棒が戻ってきて馬を連れ去ってしまうでしょう」
みんなが探しに行くと、果たして、馬はそこにいた。
ハリシャルマンは瞬く間に有名になり、スチュラダッタからも一目置かれるようになった。家族はようやく人並みの楽な生活ができるようになった。

さて、しばらくして、今度は王宮で事件が起きた。
王宮から数々の金貨や宝石が盗まれたというのだ。王様は町で評判のハリシャルマンを呼び出した。財宝の行方を問う王様に、ハリシャルマンは「明日、お答えしましょう」と答える。もちろん、時間をかせぐために。
しかし、王様もしたたかなもので、インチキ防止にハリシャルマンを王宮の一室に閉じ込めた。明日の朝、答えられなければ、相当な罰が下る。これにはハリシャルマンも参ってしまった。

「おお、舌よ! お前は贅沢をしたいばかりに何ということをしたのだ! 悪党め! さあ潔く罰を受けるがよい!」

その夜、隔離された部屋で、おのれの舌禍をひたすら嘆くハリシャルマンであったが、ちょうどそのとき外の戸口に、“舌”という名の腰元が潜んでいた。
彼女こそ財宝を盗んだ当人であった。兄弟と示し合わせて、財宝を隠したものの、噂に名高いハリシャルマンがやってくると聞き、心配になって扉に耳をそばだてていたのだ。
そこで、この大声である。
ハリシャルマンの(悲痛の)叫びに、“舌”は罪を見破られたと思い込んだ。観念して扉を開け、ハリシャルマンの前に身を投げ、許しを乞うた。
「バラモン様、私が財宝を盗んだ“舌”でございます。宝はザクロの木の下に埋めてあります。ここに取り分けておいた少量のお金があります。これを差し上げますから、どうか罪をお許しください」

びっくりしたのはハリシャルマンだが、そんなことはおくびにも出さず、威厳をもって“舌”を諭した。
「過去、現在、未来、すべて私にはわかっているんだぞ。あわれな女よ。お前が慈悲を願うなら、わしはお前の罪をばらしたりはしないよ。さあ、立ち去れ。けれど、そのお金は私に渡すんだぞ」

次の日、ハリシャルマンはまたもやもったいぶって王様をザクロの木に案内した。果たして、またもや財宝はみつかった。
王様は感嘆して、ハリシャルマンに領地を与えようとした。が、そのとき、大臣が制止した。
「何の学問ももっていない男が人間技とも思えない知識をもっているとは、不思議です。泥棒とグルになってペテンをやっているかもしれません。陛下、もう1度お試しなさいませ」
大臣の助言を、もっともだ、と思った王様は、ひとつの壺を持ってこさせた。壺の中にはカエルが入っていた。
「ハリシャルマンよ。この壺の中身を答えよ。当てたなら、褒美をたっぷりやるぞ」

壺を前にして、ハリシャルマンは、ついに運も尽きた、と悟った。
とっさに口から自らを哀れむ言葉がほとばしった。

「哀れなカエルめ! ここで突然お前が壺のために命を落とそうとは思わなかったなあ!」

……実に、ハリシャルマンは、子供の頃、父親より“カエル”と呼ばれていたのであった。

果たして、壺から1匹のカエルが現れた。一斉に湧く人々。みんなは口々にハリシャルマンの知恵を誉めたたえた。
王様はことのほか喜び、ハリシャルマンに山ほどの領地と財貨を与えたのだった。

これにより、賢人ハリシャルマンの地位は不動のものとなった。あらゆる人々から尊敬を受け……



家族共々幸せに暮らしましたとさ、とつけ加えてみる。
ちなみに、原文はこのように締めくくられている。


一つのすぐれた天分をもつ者には、運命ももっぱら好意ばかりを見せるのですね。


……「天分」……って、ペテンの?
いやいやほとんど無自覚な予言者みたいなもの。この話の中でハリシャルマンがやっているペテンって、最初を“馬隠し”だけだもの。
貧乏子沢山のハリシャルマンが、せめて祝いの席のおこぼれに預かれるか、と期待したのに、誰も自分達に関心を払ってくれなかった――という、心がキュッとなるエピソードがいい。
存在を無視されるのは、つらいもんね~。
そこで、何がなんでも少しでもマシな生活と地位を得たい、と奮闘するハリシャルマンに運命がフルスロットルで味方する話なんだけど、ここで読者の(主にわたしの)同情も入って、非常に好きな話である。

山ほどのご馳走が目の前にあっても、
相伴にあずかれないって、どれだけ切ないことか!

ペテンだろうが、詐欺師だろうが、良し! ハリシャルマンの決意には切実さと正統性がある。
しかし何度も言うように、ハリシャルマンが知恵を絞ったのは最初の馬だけで、あとは行き当たりばったり。これで人生のラストまで“賢人モード”を維持するのは、かなり無理があるよーな。
今後、難問が発生したときに、毎回、
「おお! (わが身を嘆くセリフ)!!!」
を言い続けるのだろうか。
それが毎回、どういうわけかその難問の焦点となるところにクリティカルヒットするんだろうな。

ふう。

……というのは、今現在の感想で、大昔は、


ハリシャルマンって、
かっこいい名前だなあ~。


が、主な感想だった。
やむにやまれずペテンをやっていることとか、家族のためだとか、人としての根本的な自尊心のくだりは全く記憶になくて、主人公の、すっごいショボイのに、すっごい幸運に恵まれているところが、快感だった。

弟の友達らが自宅に遊びにきたとき、本が好きそうな1人の男の子にわざわざ読み聞かせしたもんね!
熱心に聞いていたから、小学生くらいの子にもおもしろく感じるのかもしれない。

自らの機知で事態を打開するわけじゃないところが、今読むと(どうなん?)と思わないでもないが、
昔話の掟で3回エピソードで終わっているからよいものの、話が続くとただのワンパターンになるぞ、とも思わないでもないが、
なんか周りから“賢人”扱いをされていると、次第に本物の賢人になっていくんだろうな、と思わせるラスト。

俗っぽくて、情があって、でもひたむきに生きている人なんだろうな、ハリシャルマンって。

と、年をくった今、思うわけであります。
自らの自尊心のために大きな賭けに出たハリシャルマンは、すごいな~、と素直に思うわけであります。
そりゃ、天も味方するって。
そして、腹をくくったわりには全く計画なしなところも、本当はタダの“普通の人間”なのです。
ご家族と末永く幸せに暮らして欲しいものです。

しんみりとした締めになりましたが、これでよいのです。
生きていくって、今も昔もたいへんだから。


しかし、これで、

ハリシャルマンって名のカエルが実際にいたら完璧なんだけど、
……いないだろうなあ~。







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# by mao-chii | 2017-11-17 00:59 | 神話と昔話の話 | Comments(0)

笠岡諸島で干上がった話

ご訪問、ありがとうございます♡

ここしばらくブログを放置しているのには、理由があります。
開封すらしていなかった「DQ11」をお盆の頃にようやくプレイし始めまして、とりあえずレベル99にするまでは終われません。
それから、秋にあるとある試験の勉強を本格的に始めなくてはならないので、今後もしばらく(間違いなく)放置するでしょう。
どうかご了承ください○

で、夏が過ぎ去ろうとしているこの時期に、ふとUPしてみたくなった写真があります。
えと、(ゲーム時間確保のために)長文書けないから、写真でごまかしちゃえ、というヤツです。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




岡山県に面した瀬戸内海の島々は、ほとんどが香川県の島である。
「二十四の瞳」で有名な小豆島も、今ではアートで名を上げた直島も、香川県の島である。
観光客は“瀬戸内海の島”として、自動的に香川県を訪れているわけだ。
ひきかえ、影の薄い岡山県が所有する、それなりに大きな島々が笠岡諸島である。

誰も知らないけど。

とは、言いすぎだが、
笠岡に住んでいる人を除いて、岡山県人の意識に全く上がってこない島々である。
はるか昔に映画のロケ地になったこともあるらしいが、テレビの旅行番組に取り上げられることのない島々である。

そのマイナーな島々に先月行ってきた。
暑さに超弱い人間が真夏の炎天下になぜ行こうと思ったのか、ものすごくナゾだ。で、当初の予想通り、激しく消耗して帰ってきた。
あれか。
観光地化されていない(過疎化が進む)離島を初体験しました~^^
と思えばいいのか。


小学生3年生のとき、大好きだった担任の先生が転勤になった。行き先は「真鍋島」。
だから「真鍋島」をまず目指した。
(地図は笠岡市のホームページよりお借りしています)


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真鍋島は猫の島である。
船を下りると、通りに猫がちらほらいる。野良だが、人慣れしている。
島にやってきた客数人に囲まれていたが、暑いせいでどうでもよかった。



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島の大半が山で、海岸沿いくらいにしか平地がない。
平地を歩くだけで汗だくになるのに、山道なんて歩けない。
というわけで、基本、平地オンリー。



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真鍋島の特徴に、路地の多さがある。
このノスタルジックな“どこかで見た風景”が売りのひとつ。
が、感傷にひたることもなく、




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ニャゴに癒されることもなく、



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あ、真鍋中学校。
(今は小学校もすぐそばにあります)
(担任の先生が赴任した旧真鍋小学校は島の南で旅館をやっています)



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坂道。
この先はやめておこう。



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なもんで、
歩くところがなく、
再び海岸に戻ってきた。




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だれもいないよ。
瀬戸の海。青々としているが、
暑いせいでどうでもよかった。




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日差しの色が、
とても岡山県とは思えない。
どこぞの南国か。
庇すらない。



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なんとか公園で、
ニャゴといっしょに休む。



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太陽を避けるため、再び路地。
路地が入り組んでいて、迷路のようになっている。




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真鍋一族の家がある通り。
ここだけ、雰囲気がなんか違う。




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もはやどこの路地か、覚えていない。




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ずっと西に向かって歩いたので、
東に向かってみる。
ていうか、船が来るまで時間をつぶさなきゃ。



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真鍋島ふれあいパークの先の「天神社」。
岬に建っている。



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唯一の木陰。
坂道だけれども。




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展望台というには、松が雄々しく茂っていて、
なんも見えない。




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ちょっとしたお宮が、島のあちこちにある。
いつもなら目を輝かせるが、
暑いせいでどうでもよかった。



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船着き場。
民俗資料館も兼ねている。
島で唯一の公共の場。(扇風機のみ!)




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港にある「船出」というお店。
予約なしで行ったのに、快く迎えてくれた。
正真正銘、ただひとつの体力回復ポイント。




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写真、おしまい。


UPしていませんが、「円福寺」、「真鍋邸とホルトノキ」、「ふるさと村資料館」には行きました。
でも、つくづく思ったわけです。
観光地化していない、ということは、

○コンビニがない。(船着き場に自動販売機があるだけ)
○当然カフェ的なところもない。
○要するに公共の空間がない。
○つまり、
延々と、酷暑の中を歩かなくてはならない。



……どんな苦行だ。
いや~、島に渡る前に、お茶買っておいてよかったわ。




ところで、帰り際、ほほえましい出来事があった。
船に乗り込んだとき、前の席の男の子が声をかけてきた。

「あの、頭にバッタがいます」

は?
思わず頭に手を伸ばそうとしたが、へたに潰してはマズイと思い、
「ごめんなさい、取ってくれますか?」
と頼んだ。
男の子がつかまえようとしたとき、バッタがわたしの背中に飛んだ。Tシャツに必死にしがみついている。
おかげでバッタを見ることができた。

トノサマバッタよりひと回り小型の……

(あ、お前、神社に向かう山道で会ったヤツじゃん!!)

まさか、あのときから頭にいたのか?
男の子はようようバッタを引き剥がして、外に連れていった。
船が動き出してから、ふと思った。

(あのバッタは島の外に出たかったのかもしれないなあ)

じゃあ、悪いことしたかな?
でも頭にバッタを乗っけてこれ以上歩くわけにもいかないし。
それに、次に下りるところは、ここから5分の北木島だよ。


結果的にバッタの思惑は外れてよかったのかもしれない。
北木島は石の島で、石が観れたらいいな、と思っていたわたしは当てが外れた。

真鍋島以上に陽がさんさんと降り注ぎ、頼みのお茶も切れ、足も動かなくなり、ついにHPがついえた。





以上、笠岡諸島で干上がった話でした。




そうそう、
真鍋島に行った担任とちょうど1年と半年後お会いしたが、先生はサングラスをかけ別人のように黒く焼けていた。
いったい何があった!? と当時は思ったものだが、そりゃ、そうだよね、と納得。(今さらながら)


そんなとこです。
笠岡諸島。




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# by mao-chii | 2017-08-26 02:35 | 出来事の話 | Comments(0)
有名な短編である。
怪奇・恐怖系の短編集では必ず登場する作品である。

欧米で19世紀後半から20世紀初頭に発表された怪奇短編(もしくは中編)小説は多々あれど、今読むと「長いなー」と思ったり、「微妙だな~」と思ったりするものが多い。
1人称が多く、やたら持って回った語り口で、それが最終的に作品の味になっているのならいいけれど、「ふう、ようやく読み終わった」と息をつき、筋や内容に浸ることもなく、本を閉じてしまうのはどういうわけか(そしてもう2度と開くことはないだろう)。
ぶっちゃけ、読んでいるだけで眠くなってくるものが多い。

そんな“苦行”系怪奇短編(もしくは中編)小説の中で、ほど良く短く、テンポ良く、起承転結がスパッと決まって、ついでにぞくっとする感覚も味わえる完璧な短編、それがこの『猿の手』だ。
発表は1902年の、すでに20世紀。そうか、時代が新しくなるほど、とっつき易くなるのか。

しかし、
これから100年先の読者にも、おもしろい! と思わせることのできる短編
だと思う。
発表から100年経った21世紀の読者がそう言っているんだから、間違いない^^
わたしはいつも口直しで読んでいる。うん、何度読んでもおもしろい!
後世のいろんな作品に影響を与えているから、もはやあらすじを書く必要はないほどだけど……。



 外は寒い晩で、雨がしょぼしょぼ降っていたが、レイクスナム荘のこぢんまりした客間には、ブラインドが下ろされ、暖炉があかあかと燃えていた。おやじと息子が将棋(チェス)をさしていた。おやじのほうは一殺封陣、相手を窮地におとしいれて、バタバタと詰もうという日頃のハッタリ流で、今夜もわざとキングをきわどいあたりへ無鉄砲に進めてきたりするので、炉ばたで静かに編物をしていたしらが頭の老夫人までが、見かねてそばから口を出すという始末。
「そーら、あの風の音を聞いてごらん」
 取り返しのつかない差し手ちがいを、遅かりしあとになって気づいたおやじのホワイト氏は、息子の目をうまくそれからそらせようとして言った。
「聞いていますよ」息子のほうは平気で盤面を見おろしながら、片手をついとのばして、「そら、王手」
「今夜はあの男、もう来そうもなさそうだね」おやじは、盤の上に片手を浮かせたまま、言った。
「こりゃあ、詰みましたね」と、息子は答えた。
「こんなに遠くに住むと、だから困るんだ」ホワイト氏は、いきなり思いもかけないはげしい調子で言いだした。「どんなひどい泥んこの場末だって、これほどひどかないぞ。横町ときたら田圃だ。通りはまるで川だ。土地の人間はなんと思ってるかは知らんが、おおかたなんだろう、大通りに二軒しか貸家のないところなんざ、かまっちゃおれんと考えてるんだろう」
「まあさ、あなた、だいじょうぶですよ」と、妻君はとりなし顔に、「この次はあなたが勝ちますよ」
 キッと見あげたホワイト氏の目は、ちょうどうまく、母親と息子が心得顔に見かわす目と目をさえぎった。おやじの口から、出かかったことばがそのままスーッと消え、薄いゴマ塩のひげのかげに、うしろめたい苦笑がそっとかくれた。
「や、あの人、見えましたぜ」
 門のとびらがバタンと大きな音をたててしまり、のっしりした足音が玄関へ近づいてくるのを聞きつけて、息子のハーバードが言った。
(『怪奇小説傑作集1』創元推理文庫 W.W.ジェイコブズ『猿の手』平井呈一訳 より)



物語は暖かな家族の風景から始まる。
年老いた夫婦、それに彼らの1人息子。外は長雨だが、家族は仲良く団らんしている。父は息子とチェス。母親はそばで編み物。
会話の中で、彼らが貸家に住んでいること、誰か客人を待っていることもわかる。
さて、続きをちょこっとだけ書きましょうか。






客人がやってきた。知人のモリス曹長である。
彼は長らくインドに滞在し、最近ようやく帰国したため、ホワイト一家への挨拶を兼ねて、インドの奇譚、冒険譚を語るために訪問したのだ。
客人の興味深い談話を熱心に聞く家族。
老人のホワイト氏は、見違えるように凛々しい男に変貌したモリス曹長を誉め、それから言った。
「わしもインドに行ってみたいよ」
「いや、ご自分の家が一番ですよ」
曹長は謙遜とも実感ともとれる返事をする。ホワイト老人は諦めきれぬ物言いをした。
「インドの古い寺や行者や奇術が見たいと思ってな。……それはそうと、あんたがいつぞや話かけた“猿の手”とやらの話、あれはいったいどういう話だね?」
いきなりその話を振られて、曹長は言葉につまった。「聞かせるほどのものでは……」と遮ったつもりが、家族がこぞって聞き耳をたてた。「俗にいう、魔術とか妖術とか申すもんでしょうなあ……」
曹長はポケットから「しなびた動物の手」を取り出した。
気味悪がる老婦人。もの珍しそうに眺める息子のハーバード。ホワイト氏もそれを手に取り、テーブルに置いた。
モリス曹長によると、この奇妙な“手”にはある行者のまじないがかけられているという。3人の人間がそれぞれ3つの願いをかなえられるように、と。
あまりに荒唐無稽な話に、一同は笑った。(曹長のものものしい雰囲気に実際には大っぴらには笑えなかったが)
「じゃあ、あなたはなぜその3つの願いをかけないんですか?」
息子がからかうような口調で言う。
「わたしはやりました」
曹長は物静かに受けたが、その表情は青ざめていた。
「で、叶ったのですか?」
夫人がつっこんだ。
「叶いました」
簡潔な弁で返す曹長。
「どなたか他にも願った方がいらっしゃるの?」
「最初の男も願いが叶いました。――最初の2つの願いは知りませんが、3つ目は死を願ったのです。そのおかげでこの“手”が手に入りました」
曹長の、冗談めいたところのない口ぶりに、一座はしんとなった。

何を思ったか、ふいに曹長はその“まじないの手”を暖炉に放り入れた。慌ててつまみ出すホワイト氏。「焼いてしまったほうがいいんですよ」と曹長。「要らないんなら、わしがもらっておく」と老人。
ホワイト氏は尋ねた。「どうやって願うんだね?」
「右の手に高くさし上げて、大きな声で願うんです。――でも、どうなっても知りませんよ」

曹長を見送ったあと(彼は最後まで、それを捨てろ、と忠告していた)、家族は“手”にまつわる不思議な話で盛り上がった。誰も本気では信じていなかった。それ故、ハーバードは茶目っけたっぷりに提案する。
「うちにあと200ポンドあれば、家賃がすべて払えるでしょ。父さん、願ってくださいよ」
そこで、ものは試しと右手に“手”をかかげ、願いを声に出すホワイト老人だった。
「われに200ポンドを授けたまえ」
が、その瞬間、老人は悲鳴を上げ、“手”を手離した。「おい、今それが動いたぞ」
しかし、息子は気のせいと断じ、場を明るく茶化した。「きっと寝床の真ん中に、金のざくざく入った袋がデンと転がっていますよ」

次の日、金の入った袋は床のどこにもなく、一家は昨晩の馬鹿馬鹿しい出来事を一笑に付した。ハーバードは朝食の席でさらに冗談を披露し、仕事に出かけて行った。いつもと変わらない家族の朝である。
そうは言っても、ホワイト夫人はやってきた郵便配達にわずかな期待をしている自身を目の当たりにし、あの退役軍人のホラ話を腹立たしい、と思うのであった。

昼時になった。
食卓についた夫婦は、家の前をうろつく見知らぬ男に気づく。
男はしばらく逡巡していたが、決心をしたと見えて、門の中に入ってきた。200ポンドの件がよぎったホワイト夫人は、そわそわと男を招き入れる。
立派な身なりにシルクハットの正装をした男に、夫人は関心を寄せる。男が口火を切った。
「私(わたくし)、モー・アンド・メギンズ会社のものでして……」
老婦人はびくっとした。息子が勤めている会社の名だ。
「ハーバードに何かございましたか? 何があったのですか?」
つめ寄る夫人に、夫がたしなめた。ホワイト氏が言った。「まあ、落ち着きなさい、母さん。何も悪い知らせを持ってきたというわけではないのでしょう? ねえ」
「お気の毒ですが……」男は言い渋った。
「ご子息は大怪我をしました。……でも、もうお苦しみにはなってはいません」
いっとき安堵しかけた夫妻。だが、すぐにその言葉の意味するところを悟る。
「ご子息は機械に挟まれまして――」
男は努めて淡々と伝えようとしていた。「私(わたくし)は会社の一雇用人でして、社の命に従って参った次第です」
男は用件を一気に述べた。
「社としましては、全責任を放棄し、いかなる賠償も認めてはおりません。しかし、ご子息の日頃のご精勤ぶりに感謝の意を示したいと、金一封をお届け参った次第です」
「……いくらですか?」
しぼりだすような、かすれた声で問うホワイト氏に、男は答えた。
「200ポンドです」







書いてて思った。

1つ目の願い、回収終了~、という緊迫シーン以上に、

社としましては、全責任を放棄し、
いかなる賠償も認めてはおりません。

に激しく反応するサラリーマン人間。

は? 労災ないの!?

(いや、そりゃないだろう。19世紀だよ。20世紀初頭だよ。今だって、労災下りるのたいへんなんだから)
(……は! そう言えば、200ポンドって、どれくらい? 今のレートで換算したら、恐ろしくはした金だよ)
(なるほど、なるほど。正確にはわからないけれど、今の日本円に換算すると、多く見積って500万円くらいか)
(……500万円。報奨金としてはいい額だな)
(……)
(ま、いっか)


あー、何度も読むと、こんな感想すら湧いてくるな。
ええ、ええ、そんなとこは、どうでもいいのです。
戯れに願った“200ポンド”が叶ったという、絵空事と思っていた“まじない”が効いたという、その事実。

――ただし、息子の死をもって

という、残酷さ。

たった1人の大切な息子を失ったという悲しみは、200ポンドごときで癒されるものではないのです。
しかも、それが、あの冗談半分の“まじない”で成し遂げられたとしたら……!



ところで、昔話大好き人間としては、この昔話が思い浮かぶ。
昔、絵本で読んだ話。


「3つの願い」
とある夫婦のところに仙女が現れた。あなた方の願いを3つだけ叶えましょう、とほほえむ仙女。
夫婦は喜ぶが、突然の申し出に“願い”が思いつかない。お金か、寿命か、地位か。
その晩、暖炉の前でくつろぐ奥さんの口から、ぽっと出た。
「ああ、この火で大っきなソーセージを焼いたらおいしいだろうなあ」
とたん、どかんと現れる1m大の巨大ソーセージ
「バカかあ~、なんてつまんない願いをするんだ!!」
激怒する旦那さんは思わずこう叫ぶ。
「こんなソーセージなんか、お前の鼻にくっついてしまえ!!!」
とたん、ぴったりと奥さんの鼻にくっつく巨大ソーセージ
夫婦はあわてた。どんなにひっぱっても、巨大ソーセージはびくともしない。
しょげかえる2人。しかし、お互いはたと気づく。あとひとつ願いが残っている。
「お願いします! このソーセージを取ってください!!」
願いは聞き届けられ、奥さんの鼻から巨大ソーセージがぽろりと落ちた。
夫婦はいっそう喜び、それからも幸せに暮らしました、とさ。



はしょったが、こんな感じ。うん、ソーセージがおいしそうだった。
こんな、ほほえましい(笑える)話がベースになっているはずの、この『猿の手』。
なんで“200ポンド”が空中からぽっと現れないのか。
そこんとこ、リアリティーをやや陰湿な方向に追求したために、こんな話になったのです。このあとの展開も、親としての心情を追求したら、まあ、たやすく予想できるというもの。

おとぎ話の基本フォーマットに、普遍的な親子の姿、家族の思いをのっけたから、100年経った先でも共感できるんだよね。
怖いけれど、せつない。

あとさ、現実にこんな“猿の手”が現れたら、誰でも同じことをしそうだなあ、というリアリティーがすごい。そもそも捨てられたら拾うし、禁止されたら試してみたくなるもんなんだよ、人って。
その上、インドからの品、っていうフィクション的リアリティーも追加されて――

ほんと、この時代の英国ミステリー&怪奇小説、不可思議なことは全部インド、とばかりにインドネタばっかりだよっ。
理由はインドだから、で済んでしまう。東洋が欧州にとって神秘的なところであったのはわかるけれど、創作として便利だよね~~~、インド。
とはいえ、かの国がが摩訶不思議な国であるのも、ある面真実だから、これまた妙なリアリティーがでるんだよねー。

ありそうだよね。
インドに、“猿の手”。
3つの願いが叶うという――。



……。
あ、唯一の非リアリティーがあった。

そんなキモい“手”を持ち歩くなよ。
なに、さくっとポケットの中から出してんの、モリス曹長さんよ。

(不老長寿の人魚のミイラだとしても、持ち歩かないでしょ、普通)





ああ、でも、名作と言われるだけの短編ではあります♡







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# by mao-chii | 2017-08-13 22:30 | 本と物語の話 | Comments(0)
ひたすら「旅の話」ばかり量産し続けていたので、久しぶりに「神話と昔話の話」の記事を増やします。
んでもって、あと他カテゴリー含めて10記事くらい増やしたら、再び冬眠します~。



さて、今回の話。
かの有名な「青ひげ」の類話である。
「わたしが留守にしている間、この鍵束を使って、城の部屋を自由に見て回ってもよい。だが、この鍵だけは使ってはならんぞ」という言いつけを破ったせいで、夫「青ひげ」のとんでもない真実を知る若奥さまの話。
あれを思ってくれたら、いい。
昔話では、夫となる人から「~してはならない」という禁忌をもらうことになる若奥さまが多いが、禁忌というのは破られるためにあるわけで、若奥さまはたいてい(きちんと)やぶってくれます^^
もっともやぶらなければ、もっと怖い事態になっていたわけだけれど。しかし同時に、やぶることで、若奥さまの命が死に至ることもあるわけで。
そんな、どっちにしろ危機的状況には変わりない現実を実際に打破するのは、心強い「兄さん達」なわけです。ほら、今回もちゃんと語られているでしょ。


ほるぷ出版『世界むかし話 イギリス』より『ミスター・フォックス』
 
メァリーさんは若くて美しく、お嫁さんにほしいという男の人が、両手の指をぜんぶつかってもかぞえきれないほどでした。
メァリーさんにはふたりの兄さんがいて、どちらもりっぱな兵士でした。またこの美しい妹がだいすきでしたから、こんなに多くの男の人のなかから、いったいどんな相手を夫にえらぶか、いつも気にかけていました。
そのなかに、ミスター・フォックスというりっぱな紳士がいました。若いのに、ずいぶんお金持ちでしたが、この男のすじょうはだれも知りませんでした。しかし、とても勇かんでほがらかな人だったので、みんなにたいそう人気がありました。そして、この男の結婚のもうしこみかたがとてもうまかったらしく、とうとうメァリーさんは結婚のやくそくをしてしまいました。ところが、どうもふしぎなことがありました。ミスター・フォックスは花嫁をつれて帰るはずのやしきやそのみごとな家具、調度品のことはよく話すのですが、どうしたのか、見せてやろうとはひとこともいいません。まして、兄さんたちを招待する気などはぜんぜんありませんでした。


しかし、このメァリーさん、ダテに固有名詞がついているわけじゃない。
「青ひげ」と同じタイプの話なのに、ある意味全く違う話に仕上がっています。
そもそもメァリーさんは、かのお馴染みの「禁忌」を与えられてはいないのだ。
では、どうぞ!



ミスター・フォックスの振舞いを変に思ったメァリーさん。メァリーさんは結婚式前にミスター・フォックスの屋敷をこっそり訪れることにした。ミスター・フォックスと兄達が弁護士のところに出かけている間、メァリーさんは身支度を整え、屋敷に向かって出発した。
あちこち探し回った末、メァリーさんはついにミスター・フォックスの屋敷をみつける。高い城壁と深い堀に囲まれた、立派であるが――どこか薄気味悪い――屋敷であった。
城門のアーチに文字が彫り込んであった。

『勇気を出せ――勇気を出せ』

メァリーさんは勇気を出して、門をくぐった。
そこは広々とした庭だった。その隅にまた別の門があった。アーチにはこう彫り込んであった。

『勇気を出せ――勇気を出せ
だが勇気を出しすぎるな』

アーチの先は大広間であった。人気もない静かな広間に階段が続いている。メァリーさんは、階段を登った。
たどり着くと、そこは広い廊下。片側は日差しに照らされた庭を一望でき、もう片側の壁には狭い扉がついていた。
扉の上にはやはりこんな文句があった。

『勇気を出せ――勇気を出せ
だが勇気を出しすぎるな
心臓の血が凍るといけないから』

メァリーさんは明るい庭に背を向けて、その扉を開けた。
狭く暗い廊下がずっと伸びる。その廊下を下っていくと、小さく明かりが漏れる部屋があった。隙間からのぞき込み、メァリーさんは仰天した。
何本もの蝋燭に照らし出されたもの――それは、部屋のあちこちにちらばる、血まみれのウェディングドレスに身をつつんだ花嫁の骨や死体であった。
メァリーさんはきびすを返し、息もつかずに来た道を戻った。狭く暗い廊下を抜け、広い廊下を走り、階段のところまで来たとき、見知らぬ美しい娘を引きずって中庭を歩くミスター・フォックスが目に入った。
メァリーさんは階段を駆け降りると、大広間の隅にある酒だるの影に隠れた。
そのとき、ミスター・フォックスが入ってきた。
嫌がる娘を恫喝するミスター・フォックス。手すりにつかまろうとする彼女の手を、彼は怒りにまかせて、剣で打ち落とす。娘の手首は舞い上がり、指にはめたダイヤの指輪ごと、酒だるの後ろに隠れていたメァリーさんのひざに落ちた。
ミスター・フォックスがあの扉の奥に娘と共に消えるやいなや、メァリーさんはすぐさま駆け出し、

『勇気を出せ――勇気を出せ
だが勇気を出しすぎるな』

の門を越え、

『勇気を出せ――勇気を出せ』

の門を越えて、ようよう自宅に帰り着いた。
ただ、メァリーさんは可哀想な娘の手首だけはしっかりと持ち帰っていた。

さて、次の日、兄達が弁護士のもとから帰ってきたため、結婚式の準備も整い、あとは婚約の証書に署名するだけになっていた。
近所の人たちが招かれ、祝いのための料理も整いつつある中、メァリーさんはウェディングドレスを身につけ、かのミスター・フォックスも快活に応じていた。どこから見ても、良き夫ぶりである。
向かい合ってテーブルにつく2人。
ミスター・フォックスが言った。
「今朝はずいぶん顔色が悪いようだね」
メァリーさんが言った。
「夕べ、とても悪い夢を見て、よく眠れなかったからですわ」
ミスター・フォックスはほほえんだ。
「夢は逆夢というじゃないか。でも、どんな夢だったか話してごらん。きみの美しい声を聞けば、きみがぼくのものになるのを待つ時間が短くなる」
メァリーさんもほほえみ返した。その目はとても澄んでいて――
うなづき、客の前で静かに語り出すメァリーさんだった。



もう結末は予想できるでしょ。

メァリーさんが語る逐一に、青ざめ、そのたびに否定するミスター・フォックス。
メァリーさんも、そのたびに鷹揚に返す。「ええ、でも、こんなことはありえません。前にもあったためしはございませんわ」
しかし、話が佳境に入り、泣き叫ぶ娘の手首を切り払ったくだりになると、
「そんなことはありえないよ。前にもあったためしがない」
と逃げ腰でくり返すミスター・フォックスに、
「ところがこれは本当です。確かにあったことなのです。その証拠に――」



堂々と、
切り取られた娘の手首(ダイヤ付)を突きつけるメァリー。



哀れ、ミスター・フォックスは、客人達にずたずたに切り裂かれてしまいました、とさ。
一件落着。


兄ちゃんズ、出番なし。

いや、
たぶん客人と共にミスター・フォックスを成敗する役回りだったんだと思うけれど、「青ひげ」の話ように、あわやという場面で、カッコよく駆けつける兄達ではない。マジ弁護士のところに行ったことしか書かれていないよ。

そもそもメァリーさんが強者すぎる。

「青ひげ」の、周りの忠告を聞かずに結婚する若奥さまとは違って、単独で事前調査をするし、
「青ひげ」の、夫の言いつけをさくっと破り、鍵に血染めをつけてしまう若奥さまとは違って、隠れて証拠品をきっちり手に入れるし、
「青ひげ」の、兄さん達はまだなの!? と敵の城で怯える若奥さまとは違って、敵に対して自分の陣地で勝負をかけるし、

あれだ、
ミスター・フォックスこと、狐を首尾よく追い込む、手練れの狩人のようだ。

メァリーさんにしてみれば、殺人鬼に震えながらの処置だったかもしれないが、そのスマートで完璧な運びを顧みると、むしろミスター・フォックスのほうが気の毒になるね。
すごいよ、メァリーさん。
だいたいこの話、メァリーさんがいなかったらあっという間に詰んでいるよね。兄ちゃんズ、あまり役に立っていないし。

相手の秘めた最も暗い側面を、自分に最も有利な(日の当たる)場所で暴いたメァリーさんの勝ち。


というわけで、「青ひげ」モティーフというより、
「勇者メァリーの悪党成敗譚」この話も終了。



でも、昔、この話を読んで、印象に残ったのは、これ。

『勇気を出せ――勇気を出せ
だが勇気を出しすぎるな』

全く援助のない話の中で、唯一主人公の味方(?)になってくれた格言。
必要な勇気と引き際のバランスがとれていたメァリーさんだからこそ、生きて帰ってこられたのだ。
昔話よろしく、3回くり返されるこれらの格言が、この話の肝かつ、カッコよさだよな~、と思う。

で、これはこれで、実生活にも効く格言のような気がする。

それにしても、
これらの格言がなぜ「殺人鬼の館」に掲げられてあったのか。
ミスター・フォックスはなぜこの文言をわざわざ刻んでいたのか。
考えてみるとおもしろいよね。





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# by mao-chii | 2017-08-10 00:12 | 神話と昔話の話 | Comments(0)
これで最後です。

特筆するものはないですけど、
全部込みで30万円というのは、まあまあ妥当じゃないでしょうか。

全11日間。
うう、この時代は、これくらい休んでも許されていたんだよな~。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 以下、転載





<旅行概要>
スコットランド旅行
日時:2004年5月27日〜2004年6月6日
行き先:エディンバラ→インヴァネス→スカイ島→グラスゴー
宿泊:各街のゲストハウス
   エルダーヨーク   1泊35£
   クラウンハウス   1泊30£
   ローズデイルホテル 1泊45£
   チャリングクロス  1泊26£   
主な移動手段:コーチバス
       10日間の内5日間乗り放題 62£
使用航空会社:KLM   
旅行費用:航空券、交通費、宿泊費、滞在費、お土産など、
      全部込みで約30万

                    〇

最初は11エントリーで終わる予定でした。
11日間の旅行なので、1日、1エントリー。
すごくわかりやすいという単純な理由からだったんですが、ものすごく書きにくいことが1日目で判明。すぐにエピソード式に変更しました。
でも、まさかこんなにかかるとは夢にも思わず。

なので、1日目のエピソードは極端に短いです。
本当はフィレンチェ行きの女性といろいろお話したんです。
習字の先生をしていることとか、外国人にも教えていることとか、代わりに英語を教わっていることとか。
彼女は英語がうまかったです。人間、いくつになっても学ぶ意欲があれば上達するんだなと思いました。それにひきかえ、私は、学ぶ意欲、あんまりナイ。純粋な言語学習って、昔から興味なかったんだよなーとは言い訳ですか?
あれだけ「英語しゃべれたらいいなー」って書いているわりには、何もしていません。それから『国際交流〜積極的コミュニケーション』ってもんにも全く興味ありません。
……いや、ホント、書いてるだけだな。
まあ、ここら辺は性格が大きく関わっているとは思いますが。

約3年前、みんなが書いてるものを読みながら、こんな風に書けばいいんだと見様見真似でやってみたのが、このブログです。
・短いセンテンス
・行間を空ける
・たまに文字をでかくする
などなど、タグの意味も知らなかったので、書き始めは往生しました。
もっともブログの文体に決まったものがないのはすぐにわかったんですけどね。
私の文章も初期の頃と今のとではかなり違いますねえ。
今:なんか無駄に長いよなー。(書くことないからって)
初期の頃:妙に1文が短いよなー。(真似たからって)
……キャラ違うヨ。

まあ、めんどうなので今さら書き直すことはしません。
ただ、スコットランド記の1日目だけは丁寧に書けばよかったなーと後悔しています。
だって、あからさまに後ろのエントリーとつり合いがとれてないし。

スコットランド記に収めることのできなかったエピソードは多々あります。

その1:スカイ島で買ったティーセット一式。船便で丸2ヶ月かかりました。ティーセットより船便の方が高いという代物。
その2:エディンバラ観光(城以外)
その3:ハギス
※ハギスはスコットランドの郷土料理です。お酒があれば最高のつまみになるでしょう。レモネードといっしょに食べるものでは……。

                     〇

お土産リスト
「Walker」のショートブレッド
日本でも売っていますが、特にショートブレッドフィンガーは最高。バターをふんだんに使っていて、少し重みのあるもったりした感触がたまりません。
スコットランドで買おうが日本で買おうは値段が変わらないので、旅行後も定期的に買っています。それから、飲み物は断然紅茶です。間違ってもコーヒーではありません。
タータン柄
マフラーです。本当はバックが欲しかった……。
伝統的な色彩が多く、ダイアナ妃のためにデザインされたというタータン柄の衣装やバック以外、特に冒険したような柄はありませんでした。
ダイアナ妃のバックは、明るい水色の地に焦げ茶色のチェック模様が入った小さなハンドバック。とてもステキでした。でも、……高くて買えるか!
ウイスキー
言わずと知れた、スコッチウイスキーです。スコットランドに来たら、1本は買って帰りたいです。蒸留所を巡って、飲み試しをしましょう。あれ? まとも。三口しか飲めなかったからか。
バクパイプ
楽器本体は土産物には不向きです。でも、バクパイプの音色は一見ならず、一聴の価値があります。私はCDでスコティッシュホイッスルのものを買いました。……あれ?
紅茶
アイルランドもそうでしたが、紅茶だけは安いです。日本で買うよりはるかにお得です。「Whittard」の紅茶を購入しました。缶の絵柄がキュートでお洒落。ただイギリス、紅茶会社が多すぎです。
リネンのテーブルクロス
アイルランドでも売っていました。お土産には最適です。柄は様々あります。柄によって値段も違います。センスのいいものを買いましょう。ただし、そういうものはやはり高めです。
ちなみにスコティッシュフラワーは飾り栄えがあり、なおかつ安かったです。3£でした。
陶器類
スカイ島のエントリーを参照。
興味がある人にはたまらない、アーツ・アンド・クラフツの英国。倉敷の大原美術館や民芸館にも関わりがあります。
エディンバラ博物館の陶器の部屋には感激しました。その感激を英文で訪問者ノートに書き込みましたが、基本的文法を間違えました。

                     〇

そろそろ終わりです。
長々と書いてきたスコットランド記。私的お気に入りエントリーは、「ゲロ」と「シリアルフレーク」かなあ。
また、いつかスコットランドには行きたいです。
スカイ島には再度、挑戦しなければ。オークニー諸島とかシェットランド諸島とか、マイ・アイランド候補はまだまだあります。(辺境好き)

それから私。よく飽きずに書きました。お疲れ様です。
誰も誉めてくれないけど、私にはよくわかっているよ。……オメーがどれだけ飽きっぽいか。

ではでは。また会う日まで〜
                  

2007年5月 スコットランド記―――  了。

















さあ、アイスランドに行くぞ!!!

              ―2007年5月下旬出発予定―






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 転載終わり




アイスランドに行く前に何が何でも書き上げなくちゃ、の心意気で書いたものです。
つまり、行かなかったら、永遠に終わらなかったであろう、代物です^^
でも、旅行記って、追体験できるんですね。それがいい!
やっぱ、写真があると、華やかになりますな。

とはいえ、

超手抜きの“転載”記事を、わざわざ読んでくださり、どうもありがとうございました♡

しばらく海外旅行の予定はないですけど、次はコーンウォル辺りに行きたいなあ~、と考えています。
ま、思っているだけですけど^^;





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# by mao-chii | 2017-08-06 22:00 | 旅の話 | Comments(0)

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